東京高等裁判所 昭和27年(う)2131号 判決
〔抄 録〕
論旨第一点について。
記録を調査するに、被告人マルサン文具株式会社が、株主総会の決議に因つて、昭和二十五年六月二十日解散し、同年八月三日その登記をしたことは、同会社登記簿謄本の記載に照らし、所論のとおりであるが、しかし、会社は解散によつて直ちにその法人格が消滅するものではなくて、清算が結了するに至るまでは、その清算目的の範囲内において、なお、法人が存続するものであるから、解散したからといつて、それがため、既に、解散前に発生した会社の刑事責任を免れることはできないものというべく、又、清算中は、清算人が、その清算会社を代表して、同会社の一切の裁判上裁判外の行為をなすべき権限を有するものであるから、同会社に対する起訴状の送達、その他刑事訴訟上の諸手続は、すべて、右清算人を同会社の代表者としてこれをなすべきものであるところ記録によれば、被告人会社は、前示解散の登記と同時に、清算人として山崎三郎を登記してあること、及び、未だ清算が結了するに至らず、現に清算中であることが認められる上に被告人会社に対する本件起訴状の送達を初め、本件に関する一切の訴訟手続は、被告人会社の清算人である前示山崎三郎を同会社の代表者として進行して来たものであることが記録上まことに明瞭であるから、被告人会社は、所論のように本件の刑事責任を免れることができないと同時に、原判決にはこの点について所論のような判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反があるものということはできない。故に論旨はすべて理由がない。